アフリカ大陸は、多様な民族文化が息づく場所であり、それぞれの文化に根ざした信仰が、独特の仮面と神像を生み出してきました。本展では、アフリカの信仰と美が融合した仮面と神像を紹介し、その魅力に迫ります。
アフリカの仮面は、単なる装飾品ではなく、儀礼や祭祀において神々や祖霊と交信する重要な役割を担ってきました。精霊や動物を模した仮面は、着用することでその力が宿ると信じられ、人々の願いや祈りを体現する媒体として用いられてきました。
一方、神像は、神々や祖先の姿を象ったもので、信仰の対象として崇拝されてきました。精緻な彫刻が施された神像は、その力強い存在感で人々に畏敬の念を抱かせ、精神的な支えとなってきました。その中には、強烈な呪力を宿すとされる「呪物」として扱われてきたものも存在します。
アフリカの多様な信仰心と独特の発想から創造された仮面と神像は、儀式や祭礼の場の役割だけでなく、美術的な要素も兼ね備え、造形美を追求した作品としても評価されています。
アフリカの様々な民族が用いる多様な仮面や神像に込められた意味や物語を紐解きながら、アフリカの人々の精神世界と、そこから生まれた造形美の奥深さを体感してください。
東アフリカの豊かな大地に育まれた精緻で力強い造形美は、タンザニアとモザンビークに暮らすマコンデ民族の伝統彫刻に受け継がれています。彼らの彫刻は、人間や精霊の姿を生き生きと造形してきました。
本展では、現代マコンデ彫刻を代表する二人の巨匠、チャヌオ・マンドゥ(1930s-1994)とダスタニ・シモニ(1935-2005)の作品を紹介します。
チャヌオは、緻密で洗練された彫りにより、シェタニ像(サタンに語源を持つ、マコンデに伝わる想像上の霊的存在)や半抽象的な人物像を創造しました。驚くべき独創性と流れるような曲線美は、彼の卓越した感性と素材を巧みに操る技術により生み出されました。
一方、ダスタニは、ジャコメッティの影響を強く受けるとともに伝統的なマコンデのスタイルと融合して、流れるような独創的なフォルムと、大胆に半抽象化したシェタニ像で独自のスタイルを確立しました。彼はマコンデ彫刻の革新者として国際的に高い評価を得ています。
独創的な個性を持つ二人のアーティストの卓越した技術によって生み出された彫刻作品は、生命のエネルギーに満ち溢れています。この貴重な機会に、ダスタニとチャヌオという二つの才能が織りなす芸術の世界を、どうぞご堪能ください。