私がマコンデと出会ったのは、1971年のある日でした。
名古屋の民芸品店で、 東南アジアを中心にした各国の民芸品が並ぶ中に、 一段と輝いた黒い人像が私を見つめていました。狩りをする男、 斧を持った男、 子供を背負う女、太い木を抱える男など、いずれも生命感の強い作品で、それがマコンデ彫刻だったのです。
どの彫刻にも私を虜にする魅力があり、マコンデ収集の始まりとなりました。その魔力、魅力が私をアフリカヘ何度も導き収集させ、1984年には、美術館の開館へと発展させたのです。(1991年に現在地の伊勢市に移転)
当館は、彫刻のほか、鮮やかな色彩で描かれたティンガティンガのオリジナルや、ティンガティンガ派の絵画とバチック、楽器、生活用具などの民俗資料をあわせて600点以上を展示し、アフリカの文化をより身近に感じていただけることと思います。
なお当美術館は、三重県伊勢志摩国立公園の玄関口二見町。東側に伊勢湾の池の浦を見下ろす高台に位置し、二見浦の夫婦岩、伊勢神宮などに近接したすばらしい環境にあります。
名誉館長(初代館長) 水野 恒男
東アフリカのタンザニア、モザンビーク両国国境に広がる5,000平方キロメートルの広大な高原地帯、マコンデ高原に住むマコンデ族は、バンドゥ族の一員で、およそ150万人の人口を有しています。
マコンデの名は、この高原の名に由来しています。海抜500~800mの高さにある外界から隔絶した高原で、古代のマコンデ文化はすばらしい彫刻芸術の花を咲かせました。最初の父親が木を彫って最初の母親を創ったという伝説を持つ彼らにとって、彫像は聖なる意味を持ち、今日まで数世紀の歳月を費やして独自の木彫りの技術を発展させてきました。
今日のマコンデ彫刻は、ほとんどが東アフリカの豊富なアフリカ黒檀を使っています。このアフリカ黒檀は、恐ろしく硬く彫刻するには、かなりの抵抗感があり容易ではありませんが、彼らは枝や根の自然の形から、イメージを豊かにして製作をしています。
近年、マコンデ彫刻界は、経済の中心都市ダルエスサラーム付近に制作の場を移し、さらに数多くの有能な作家を得て、世界の美術界で注目されるに至っています。